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東京高等裁判所 平成6年(ラ)1401号 決定 1994年12月19日

抗告人 エルビー商事株式会社

右代表者代表取締役 稲垣勝

相手方 斎藤慶一

主文

原決定を取り消す。

理由

一  本件抗告の趣旨及び理由は、別紙「執行抗告の申立書」記載のとおりである。

二  そこで、抗告理由について判断する。

民事執行法六三条一項の剰余を生ずる見込みがない旨の通知を受けた差押債権者は、通知を受けた日から一週間以内に同条二項の買受けの申出及び保証の提供をすべきであるが、これを怠り、同条二項によって執行手続が取り消された場合であっても、その取消決定が確定するまでは、有効に買受けの申出及び保証の提供をすることができると解するのが相当である。なぜなら、差押債権者は、執行手続が取り消されたとしても、再度、競売の申立てをすることができるし、無用な手続費用を回避することができるからである。

本件についてみると、抗告人は、平成六年一〇月二四日、民事執行法六三条一項の無剰余通知を受けながら、同条二項の買受けの申出等をしなかったため、同年一一月四日付けの競売手続取消決定を同月一四日告知され、その確定前の同月一七日、同条二項の買受けの申出をし、民事執行規則三二条一項三号の文書を提出して保証の提供をし、併せて右取消決定に対する執行抗告の申立てをしたことが記録上認められる。

そうすると、抗告人は、民事執行法六三条二項の買受けの申出及び担保の提供を有効にしたものであるから、本件競売手続を続行すべきである。

三  よって、本件抗告は理由があるから、原決定を取り消すこととし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 矢崎秀一 裁判官 及川憲夫 裁判官 浅香紀久雄)

別紙 執行抗告の申立書

当事者 別紙目録のとおり

上記当事者の新潟地方裁判所平成六年(ケ)第一六五号不動産競売申立事件について、同裁判所が平成六年一一月四日なした競売申立手続を取り消す旨の決定に対し、不服であるから抗告を申し立てます。

原決定の表示

事件番号 平成六年(ケ)第一六五号不動産競売申立事件

主文 別紙物件目録記載の不動産に対する競売の手続を取消す。

抗告の趣旨 原決定を取り消す、との裁判を求める。

抗告理由

(1)抗告人(競売申立債権者)は、貴庁より剰余の見込みがない旨の通知書を受領後、手続費用及び優先債権の見込額を超える額(申出額)を金二、七〇〇万円と定め、上記申出額に達する買受けの申出がないときは、競売申立債権者が自ら申出額で本件不動産を買い受けることとした。

(2)上記の保証の提供のため、株式会社大光銀行学校町支店と支払保証委託契約を締結した。

(3)同支店では支払保証委託契約書を本店(長岡市大手通一丁目五番地六)より取り寄せ支店での決裁後、同契約が本店決裁であるため、同書類を長岡市の本店に送付する等日数がかかったため、不動産買受けの申出書の提出が遅れたものである。

(4)本日株式会社大光銀行学校町支店より支払保証委託契約書の提出があったので、 不動産買受けの申出書と共に提出する。

(5)以上の理由から本抗告の申立てをするものである。

平成六年一一月 日

競売申立債権者

新潟市網川原二丁目一八番七号

エルビー商事株式会社

代表者代表取締役 稲垣勝

新潟地方裁判所

御中

別紙 当事者目録<省略>

物件目録<省略>

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